看護師として働き始めたばかりの人にとって、自分に合う働き方をすぐに見つけるのは困難です。看護師の働き方は多岐にわたるため、新人看護師は選択肢の多さに戸惑います。この記事では、看護師の働き方を就業場所別、雇用形態別、勤務形態別に詳しく解説します。
看護師の働き方を選ぶ際、適性や希望する勤務環境、ワークライフバランスなどを考慮することが大切です。記事を読んで、さまざまな選択肢を知り、自分に合った働き方を見つけましょう。
【就業場所別】看護師の働き方
看護師の働き方は就業場所によって大きく異なります。新人看護師にとって、自分に合った環境選びが重要です。以下を参考にしてください。
- 病院
- 診療所(クリニック)
- 訪問看護ステーション
- 介護施設
- 保育園
- 企業
- 看護大学・専門学校の教員職
病院
病院で働く看護師は、24時間体制で患者の命を守る重要な役割を担います。急性期から慢性期まで幅広い患者に対応するので、さまざまな経験を積めます。病院で働くメリットは、専門性を高める機会が多いことです。チーム医療の中心的役割を担え、キャリアアップの機会も豊富です。新人教育システムの充実も挙げられます。
夜勤や交代制勤務が一般的なので、体力的な負担は大きいです。緊急時の対応や高度な医療技術も求められるため、常に最新の知識と技術を身に付ける必要があります。患者の入院管理や長期的なケアも必要なので、継続的な観察と支援が求められます。
診療所(クリニック)
診療所(クリニック)は新人看護師にとって魅力的です。外来診療や軽度の入院患者の対応が主な業務となります。病院と比べて規模が小さいため、患者との密接な関係を築きやすいです。診療所で働くメリットは以下のとおりです。
- 勤務時間の規則性
- 少ない夜勤
- 柔軟な働き方
- 地域密着型医療
診療科目が限定されているので、幅広い経験を積みたい人には向いていません。医療機器や設備は病院と比べて少なく、慢性疾患の管理や予防医療に重点を置くことが多いです。患者の生活背景を理解しやすい環境なので、きめ細かいケアを提供できます。
さまざまな年齢層の患者に対応するため、コミュニケーション能力を伸ばせます。医師や他のスタッフとの連携が密接で、チーム医療の大切さを学べる環境でもあります。地域の健康教育や予防活動に携わる機会もあり、看護師としての専門性を生かせるのでおすすめです。
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訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、患者の自宅を訪問して看護サービスを提供します。医療処置や服薬管理、リハビリ支援など、幅広いケアを行っています。24時間365日対応の体制が特長です。仕事内容は、以下のとおりです。
- 医療処置の実施
- 服薬管理のサポート
- リハビリテーションの支援
- 患者や家族への指導や相談対応
訪問看護ステーションで働く看護師には、高度な判断力と臨機応変な対応が求められます。1人で判断・行動する機会が多いため、自己管理能力と時間管理スキルも必要です。患者や家族との信頼関係構築も重要な役割です。家庭で看護を行うので、患者の生活背景の理解と適切なケアが大切になります。
訪問看護ステーションは、地域包括ケアシステムの中核的役割を担っています。医療機関や介護施設との連携を密に行い、患者を支える体制を整えることも重要です。
介護施設
介護施設は、高齢者向けの施設での看護ケアが主な役割です。特別養護老人ホームや老人保健施設、有料老人ホームが主な施設として挙げられます。慢性疾患や認知症の利用者が多く、医療的ケアと生活支援が必要です。介護職員との連携が重要で、チームケアが基本となります。
介護施設では、落ち着いた環境で仕事が可能です。利用者との長期的な関係構築により、じっくりと看護ケアができます。夜勤や休日勤務もあるため、勤務形態の事前確認も大切です。介護施設での看護師の役割には、リハビリテーションや機能維持の支援も含まれます。
感染症対策や転倒予防などの安全管理も重要な業務の1つです。利用者の健康と安全を守るために、常に注意を払いましょう。
保育園
保育園での看護師の仕事は、子どもの健康管理が中心です。園児の健康状態を毎日観察し、記録をつけます。怪我や病気の応急処置も業務内容となります。業務内容は以下のとおりです。
- 感染症対策
- 保健指導
- 予防接種・健康診断管理
- 発達支援
- アレルギー対応
保育士と協力して子どもの健康的な生活習慣を指導するのも大切な役割です。園内の衛生管理も看護師の仕事となります。保育園は通常日勤のみで夜勤がないので、子育て中の看護師に人気の職場です。子どもが好きな人や、ワークライフバランスを重視したい人におすすめの職場です。
企業
企業で働く看護師は、従業員の健康管理を担います。仕事内容は以下のとおりです。
- 産業医として従業員の健康管理
- 労働安全衛生教育の実施
- 感染症対策の立案と実行
- 従業員向け健康相談の実施
- 救急対応や応急処置の提供
企業看護師は、従業員の健康を守り、生産性の向上に貢献するのが大切です。健康増進プログラムの企画運営や産業保健に関する法令遵守の確認もしましょう。企業看護師として働くと、病院とは異なる環境で看護スキルを生かせます。予防医学の観点から従業員の健康を支援できるので、やりがいを感じられます。
看護大学・専門学校の教員職
看護大学や専門学校の教員職は、看護師としてのキャリアを生かしながら教育者として活躍できる魅力的な選択肢です。講義や演習の計画と実施、実習の指導と評価、学生の進路相談や生活指導、研究活動や論文執筆などがあります。
教員職に就くには、臨床経験に加えて修士号以上の学位が必要です。教育スキルや研究能力も求められます。柔軟な勤務時間と長期休暇があるものの、給与面は臨床現場よりも低いのが現状です。
最新の医療知識を継続的に習得する必要があるので、学び続ける姿勢も必要になります。他の教育機関や医療施設との連携も重要な仕事の一部です。学会や研修会への参加機会も多く、教員としてのキャリアアップの可能性も広がります。看護師としての経験を生かしつつ、教育者として新たな挑戦ができます。
【雇用形態別】看護師の働き方
看護師の雇用形態は以下のとおりです。
- 常勤
- 契約
- パート・アルバイト
- 派遣
ライフスタイルやキャリアプランに合わせて選択すると、より充実した看護師生活を送れます。
常勤
常勤は雇用が安定しており、長期的なキャリア形成が可能です。メリットは以下のとおりです。
- 福利厚生が充実している
- キャリアアップの機会がある
- 昇給・賞与がある
- 退職金制度がある
看護師の仕事は責任が重く、業務量が多い傾向があります。残業や夜勤も多いため、体力的な負担を考慮しましょう。常勤の看護師は病院の中核として働けるため、専門性を高められます。研修や教育制度が充実しており、スキルアップを目指す新人看護師にとって魅力的な選択肢です。
長期的に同じ職場で働くと、深い人間関係を築けます。
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契約
契約看護師は期間限定の雇用契約ですが、正社員に近い待遇で働けます。契約看護師の特徴は以下のとおりです。
- フルタイムまたはパートタイムとして勤務する
- 常勤と同じ福利厚生を受けられる
- 契約期間が設けられている
- 専門性を磨きながら経験を積める
契約看護師は、常勤看護師ほどの雇用の安定性はありませんが、パート・アルバイトよりも待遇が良いです。給与は常勤より低めですが、同じ仕事内容の場合もあります。契約看護師のメリットは、スキルアップや経験を積むのに適している点です。勤務時間や日数の融通がきくため、ワークライフバランスを取りやすいです。
将来的に常勤登用の可能性もあるため、キャリアアップを目指す新人看護師にとっては良い選択肢となります。自分のペースで成長しながら、将来の働き方を考える時間を持てるためおすすめです。
パート・アルバイト
パート・アルバイトは勤務時間や日数を自由に選べるので、柔軟な働き方を望む人に向いています。メリットは以下のとおりです。
- 家庭や育児と両立できる
- 自分のペースで経験を積める
- 複数の施設で勤務できる
常勤と比べて福利厚生が少ない場合が多いという点には注意が必要です。給与は時給制が一般的で、社会保険加入の有無は勤務時間数によって変わります。夜勤や土日祝日勤務の有無は、施設によって異なります。短期間や季節限定の求人もあり、自分のライフスタイルに合わせて選べるのが特徴です。
パート・アルバイトから始めて、将来的に常勤への登用のチャンスがある場合もあります。新人看護師にとっては、段階的にキャリアを積んでいく良い機会です。
派遣
派遣看護師は、短い期間でさまざまな医療機関に勤める働き方です。派遣看護師は以下のメリットがあります。
- 勤務時間や曜日の選択が自由である
- 常勤への転職のステップにつながる
- 時給が高い
- スキルアップの機会がある
- 勤務先の人間関係に左右されにくい
- 残業が少ない傾向がある
福利厚生は限定的な場合が多いので注意が必要です。多くの職場を経験できるため、自分に合った職場を見つけやすい反面、長期的なキャリア形成には不向きな面もあります。派遣看護師は、プライベートとの両立を重視する方におすすめです。
【勤務形態別】看護師の働き方
勤務形態を理解し、自分のライフスタイルや希望に合わせて適切に選択しましょう。勤務形態は以下のとおりです。
- 交代制
- 日勤のみ
- 非常勤(パート・アルバイト)
- 夜勤専従
交代制
入院病床のある医療機関で働く場合、常勤の看護師は一般的に夜勤も含む勤務体制をとります。通常、2交代制または3交代制勤務です。日勤・準夜勤・深夜勤のシフトを交代で担当するため、不規則な生活リズムになりがちですが、以下のメリットがあります。
- 夜間勤務手当が出る
- 様々な症例を担当し、経験を積める
- 夜間の患者ケアスキルが磨ける
- キャリアアップの機会がある
夜勤では急変時の対応スキルも身に付きますが、身体的・精神的負担が大きいため、チームワークが重要です。常に学び続ける姿勢も求められます。
日勤のみ
日勤のみの働きかたは、規則正しい生活リズムを保つことが可能です。通常8時間程度の勤務で、夜勤や休日出勤がないため、ワークライフバランスを取りやすくなります。外来や検診センター、クリニックなどで多い勤務形態です。
一部の病院では、外来看護師も夜間診療などで夜勤があるため、勤務条件を確認することが重要です。日勤のみの働きかたは、自分のペースで成長できるため、充実した看護師生活を送れます。
非常勤(パート・アルバイト)
非常勤は時給制が一般的で、家庭との両立がしやすい働き方です。勤務シフトの融通がきくため、自分のライフスタイルに合わせて働けます。夜勤や休日出勤が少ない、もしくは日勤のみのため、プライベートの時間を大切にしたい人におすすめです。
非常勤にはキャリアアップの機会が限られる可能性があり、給与や待遇面で常勤との差があります。雇用の安定性が正社員より低いです。社会保険の適用は勤務時間によって異なるので、事前に確認が必要です。常勤への登用の可能性がある職場もあるため、将来のキャリアプランに応じて選択しましょう。
夜勤専従
夜勤専従は、夜間のみの働き方です。通常、週3〜4日程度の勤務で、日中の時間を自由に使えるので、プライベートな時間を確保しやすいのが特徴です。夜勤手当も高いため、収入面でのメリットもあります。
一方、デメリットとしては身体的・精神的負担が大きいことです。生活リズムが昼夜逆転するため、健康管理に注意が必要です。以下の点に気をつける必要があります。
- 睡眠管理の徹底
- 規則正しい食事
- 適度な運動
夜勤専従は、経験を積んだ看護師に向いている働き方です。夜間の緊急対応や判断力が求められるため、十分な経験と知識が必要になります。チーム医療の重要性が高く、夜勤専従者同士の連携が欠かせません。夜間特有の患者のケアなど、専門的なスキルを身に付けることが大切です。
家庭との両立が難しい場合もあるので、自分のライフスタイルに合うかどうか、よく考えてから選択してください。
看護師が働き方を考えるときのポイント
看護師の働き方を考える際、自身の価値観や目標、生活スタイルなど、下記のポイントに合わせて選択します。
- 理想の看護師像を描く
- ライフプランを考慮する
- 優先順位をつける
理想の看護師像を描く
理想の看護師像を描くと、自分の目指す方向が明確になり、モチベーションを維持できます。患者との関わり方や提供したいケア、専門性を高めたい分野、身に付けたいスキルなどを考えて理想像を描くと良いです。尊敬できる先輩看護師を分析するのも参考になります。
自分の強みや価値観も踏まえて、無理のない理想像を設定しましょう。理想像が決まったら、短期・中期・長期的な目標を立て、達成のための具体的な行動計画を作成します。定期的に自己評価を行い、必要に応じて理想像や目標を見直すことも重要です。
ライフプランを考慮する
短期的な目標だけでなく、長期的な視点を持つと、より充実したキャリアを築けます。具体的には、以下の点を考慮しながらライフプランを立ててください。
- ライフイベント
- 家族の状況
- 経済的計画
- キャリアアップ
- ワークライフバランス
5年後に専門資格を取得するなど、具体的な目標を立てるとモチベーションを保ちながら着実にキャリアを積めます。ライフプランは状況の変化に応じて見直しましょう。定期的に自分の目標や優先順位を確認し、必要に応じて計画を調整すると、より充実した看護師人生を送れます。
» 看護師の休暇事情と、休暇の取り方を徹底解説
優先順位をつける
自分にとって最も大切な要素を見極めることで、より満足度の高い働き方を選択できます。以下の点を考慮して優先順位をつけてください。
- 仕事とプライベートのバランス
- キャリア目標との整合性
- 経済的な側面
- 働きやすさと成長機会
優先順位は個人の価値観や状況によって異なるので、自分自身と向き合い、じっくりと考えることが大切です。家族や信頼できる同僚の意見を聞くのもおすすめです。優先順位は時間とともに変化する可能性があるため、定期的に見直しましょう。自分の価値観や目標に合った働き方を選ぶと、より充実した看護師人生を送れます。
まとめ
看護師の仕事には、さまざまな選択肢があります。就業場所や雇用形態、勤務形態など、多くの可能性があるため、自分に合った働き方を見つけましょう。理想の看護師像を描き、ライフプランを考慮しながら、自分にとっての優先順位を明確にすることが大切です。
ポイントを踏まえて自分に合った働き方を選ぶと、やりがいを感じながら長く働き続けられます。
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