看護師として働いている方の多くは、今の仕事に不満を感じています。看護師は離職率の高い職業で、さまざまな不安や悩みに直面します。離職を考える前に自分の状況を把握して、適切な対処法を見つけるのが大切です。
本記事では看護師の離職率が高い現状と、看護師の離職理由について解説します。記事を読めば看護師の離職率が高い理由がわかり、自分のキャリアについて冷静に考えるヒントを得られます。離職を考えている方は参考にしてください。
【項目別】看護師の離職率
看護師の離職率については、以下のとおりです。
- 日本全体での離職率
- 新卒看護師の離職率
- 都道府県別の離職率
- 病床規模別の離職率
- 他の職種と比較した離職率
日本全体での離職率
2022年度のデータによると、日本全体での看護師の離職率は約11.8%です。2011年度以降は、10%台を推移しています。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、離職率が上がりました。
離職率は病院の規模や地域によって差があります。小さい病院や都市部の病院は、離職率が高い傾向にあります。大規模な病院や地方の病院は、離職率が低めです。各医療機関は労働環境や人間関係を改善して、離職率の低下を目指しています。
新卒看護師の離職率
新卒看護師の離職率は約10%で、看護師業界全体でも高い数字です。人間関係や長時間労働のストレスが、新卒看護師が離職する原因です。1年目の離職率が最も高く、次の年以降は徐々に低下する傾向があります。離職率を改善するために、病院が行っている取り組みは以下のとおりです。
- 教育体制の整備
- メンター制度の導入
- 労働条件の改善
上記の取り組みをすれば、新卒看護師の離職率は低下します。ワークライフバランスも重要な要素です。新卒看護師のサポート体制を強化すれば、離職率の改善が期待できます。
都道府県別の離職率
都市部と地方では、離職率の差が大きいです。都市部ほど離職率が高く、地方ほど低い傾向があります。離職率が高い順だと、以下のとおりです。
- 東京都・神奈川県:14.6%
- 大阪府:14.3%
- 千葉県:13.5%
離職率が低い順だと、以下のとおりです。
- 青森県・山形県:7.3%
- 岩手県:7.4%
- 秋田県:7.5%
47都道府県中、30の都道府県が全国平均を下回っています。都市部では転職先の多さや生活費の高さが、離職率の上昇につながっています。地方では地域に根差した生活になるため、離職率が低いです。
病床規模別の離職率
病床規模によって、看護師の離職率が違います。大きな病院では離職率が低く、小さな病院では高くなっています。人手不足や仕事の負担増加が、離職率が高い原因です。小さな病院では、看護師1人当たりの仕事量が増えます。
500床以上の大規模病院では離職率が低いです。大きな病院では福利厚生が充実しているため、看護師が長く働ける環境が整っています。100〜199床の病院では、離職率が平均的です。病床規模によって看護師の働く環境や条件が異なるため、離職率にも差が出ます。
他の職種と比較した離職率
他の職種と比較しても、看護師の離職率は高いです。看護師の離職率よりも、医師や薬剤師の離職率は低い傾向があります。看護師の離職率と同程度なのが、理学療法士と作業療法士です。介護士の離職率は、看護師より高いです。
一般企業や公務員と比較しても、看護師の離職率は高い水準にあります。看護師の特殊な労働環境が、離職率を高くしている原因です。労働環境は改善傾向にありますが、まだ十分ではありません。離職率の高さを考慮したうえで、キャリアプランを考える必要があります。
看護師の離職率が高い病院の特徴
離職率が高い病院の特徴は、以下のとおりです。
- 規模が小さい病院
- 都心部にある病院
- 民間病院
規模が小さい病院
規模が小さい病院では、離職率が高い傾向にあります。看護師にとって働きやすい環境を整えるのが難しいからです。規模が小さい病院には、以下のような課題があります。
- 人材育成や福利厚生が充実していない
- 少人数なので業務負担が多い
- キャリアアップの機会が少ない
小さい病院ならではのメリットも多いです。スタッフ間の距離が近いので、チームワークが強化されます。小さい病院では一人ひとりの役割が大きく、早い段階から責任ある業務を任される場合もあります。さまざまな仕事を経験できれば、大幅なスキルアップが可能です。
都心部にある病院
都心部にある病院では、看護師の離職率が高いです。都市部の病院は患者数が多いので、看護師の業務量が増加します。夜勤や残業も多いため、体力的に続けるのが難しい場合もあります。緊急対応も多く、新人看護師にとっては大きなストレスです。
若い看護師も多く、教育が行き届きにくいのも大きな課題です。教育ができていないと待遇に不満を持たれてしまい、離職率が上がります。看護師が長く働くには、病院側のサポートが不可欠です。
民間病院
民間病院では、離職率が高い傾向にあります。経営の不安定さが離職率に影響を与えています。福利厚生が充実していない場合も多く、看護師の満足度は低いです。スタッフも少ないので業務負担が大きく、仕事にストレスを感じます。
公立病院と比べて、キャリアアップの機会が少ないのも離職率が高い要因です。教育・研修制度が整っておらず、スキルアップできません。経営方針の変更で、雇用が不安定になる可能性もあります。
労働条件や勤務体制を柔軟に変更できないため、ワークライフバランスを重視する看護師には向いていません。モチベーションが低下すると、離職率が上がります。古い医療設備を使い続けている場合があり、仕事がしづらい可能性もあります。
看護師の離職率が低い病院の特徴
看護師の離職率が低い病院の特徴は、以下のとおりです。
- 規模が大きい病院
- 地方にある病院
- 公立病院
規模が大きい病院
規模が大きい病院は働きやすい環境が整っているため、看護師の離職率が低いです。規模が大きい病院には、以下の特徴があります。
- 教育・研修制度が整っている
- キャリアアップの機会が多い
- 設備が充実している
- 福利厚生が充実している
- 給与水準が高い
看護師が働きやすい環境を整えれば、仕事にやりがいが生まれます。最新の設備を使ってさまざまな経験を積めるので、大幅なスキルアップが可能です。福利厚生も充実しており、休暇を取りやすい環境が作られています。規模の大きい病院は魅力的な職場環境を用意して、看護師の離職率を低く抑えています。
地方にある病院
地方にある病院でも、離職率が低いです。地域とのつながりが強く、地域医療に貢献している実感を得られます。地元出身の看護師が多く、同僚と交流がしやすいのも離職率が低い理由です。通勤時間も短い傾向にあり、仕事とプライベートが充実しやすい環境が整っています。
地方自治体からの支援を受けやすいのも、大きなメリットです。地方での仕事は生活コストを抑えられるので、経済的な面でも生活が安定します。地域医療に貢献しながら、将来のキャリアを考えられる環境も整っています。
公立病院
公立病院では看護師の離職率が低いです。公立病院は地域医療の中核を担う役割があります。福利厚生が充実しており、看護師が働きやすい職場環境です。研修制度もあるので、自分のスキルアップにつながります。公務員としての身分保証があるため、長期的なキャリア形成が可能です。
看護師が離職する理由
看護師が離職する理由は、以下のとおりです。
- ライフスタイルの変化
- 人間関係の悩み
- 労働環境への不満
- 体力的・精神的な負担
- キャリアアップやスキルアップのため
ライフスタイルの変化
ライフスタイルの変化により、離職する方は多くいます。結婚や出産のタイミングで、仕事と私生活のバランスを見直す方が多いです。出産後は子育てと仕事の両立が難しく、勤務時間の調整や休職が必要です。ライフスタイルの変化に対応できる職場環境が整っていないと、離職率は上がります。
人間関係の悩み
人間関係のストレスによって、仕事のモチベーションが低下する可能性は高いです。人間関係が悪化すると、離職する看護師が増えます。人間関係でストレスを感じる場面は、以下のとおりです。
- 上司とのコミュニケーション
- 同僚とのコミュニケーション
- 患者や家族とのトラブル
- 職場内のいじめやハラスメント
新人看護師には、人間関係を構築するスキルが足りない場合もあります。上司や同僚とのコミュニケーションに、ストレスを感じる新人看護師は多いです。良好な人間関係を築くためには、自己理解を深めるのが大切です。自分の強みや弱みを知れば、コミュニケーションスキルが向上します。
» 新人看護師が知っておきたいことを解説!
労働環境への不満
労働環境に不満があると、離職する看護師も増えます。看護師が不満を感じる状況は、以下のとおりです。
- 長時間労働や夜勤が多い
- 休暇が取りにくい
- 給料が少ない
看護師の仕事は業務量が多く、休憩時間が取れない場合もあります。夜勤や残業が多く、プライベートの時間を確保しにくいです。長時間労働の割に、給料が少ないと感じている看護師も多くいます。働きやすい環境作りに取り組む病院が増えていますが、まだ十分とは言えません。
体力的・精神的な負担
体力的・精神的に負担を感じて離職する看護師は多くいます。看護師の仕事は長時間労働や夜勤が多く、体力的に負担がかかります。患者の急変や死亡に直面して、精神的なショックを受ける可能性も高いです。体力的・精神的な負担が重なると、離職する看護師が増えます。
キャリアアップやスキルアップのため
キャリアアップやスキルアップのために、離職を考える看護師もいます。目標達成のために、新しい環境で調整したいと考える看護師は多いです。具体的には以下の目標があります。
- 高度な医療技術を習得したい
- 特定の病院で経験を積みたい
- 管理職やリーダーポジションを目指したい
- 看護教育者としてのキャリアを追求したい
キャリアアップやスキルアップを求める場合、離職だけが選択肢ではありません。現在の職場で新しい役割を持てば、キャリアアップできる可能性があります。離職を考える前に、現在の職場でキャリアアップできないか考えるのが大切です。
看護師が今の職場をやめるか悩んだときの対処法
看護師の仕事をやめるか悩んだときは、以下の対処法を試してみてください。
- やめたい理由と理想の条件を書き出す
- 先輩や同僚に相談する
- 転職エージェントに相談する
やめたい理由と理想の条件を書き出す
やめたい理由と理想の条件を整理すると、自分の考えが明確になります。現在の職場で感じている不満や問題点を、具体的に書き出すのが大切です。人間関係の悩みや労働時間の長さ、給与への不満などを書き出します。現在感じている不満や問題点がわかったら、理想の職場環境も書き出してみましょう。
金銭面やスキル面、ワークライフバランスを考慮して考えるのが大切です。以下の項目を参考に考えてみてください。
- スキルアップの機会
- 給与や福利厚生
- 職場の雰囲気
先輩や同僚に相談する
今の職場をやめるか悩んだときは、先輩や同僚に相談するのがおすすめです。経験豊富な先輩や信頼できる同僚からアドバイスをもらえば、解決策が見つかる可能性があります。自分の悩みを、具体的に整理して伝えるのが大切です。
信頼できる人に相談すれば、新しい視点からアドバイスがもらえます。もらったアドバイスを実践して、結果を報告するのもおすすめです。対話を重ねれば、職場の人間関係も良くなります。
転職エージェントに相談する
現在の職場をやめて転職をしたい場合は、転職エージェントに相談するのもおすすめです。経験豊富なエージェントから、専門的なアドバイスがもらえます。転職エージェントを活用する際は、以下のポイントに注意が必要です。
- 複数のエージェントに相談する
- 看護師専門のエージェントを選ぶ
- 自分の希望や条件を明確に伝える
- 現在の悩みや不満を率直に話す
転職エージェントでは、客観的な立場からアドバイスがもらえます。自分の市場価値や転職の可能性について、新しい気づきを得られます。転職エージェントを通じて、非公開の求人情報や最新の求人情報を知れるのも大きなメリットです。
転職エージェントでは、転職活動全般に関するサポートを受けられるのが特徴です。履歴書作成や面接対策、給与交渉のアドバイスを受けられます。転職後のフォローアップがあるか、確認しておくと安心です。
まとめ
看護師の離職率は、日本全体で約11.8%です。ライフスタイルの変化や人間関係の悩みが原因で、離職率が高まっています。離職を考えている方は、自分自身の状況を見つめ直し、今後の方向性を定める必要があります。転職エージェントに相談して、今後のアドバイスをもらうのもおすすめです。
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